森木製菓

果たして社長になれるのか!?

菅田将暉くんとの9,000文字の物語


一昨年あたりに書き進めていた脚本。

ワードで20ページ分、たぶんもう更新することは無いです。

でも自分だけしか知らないのもなんだかもったいない気がしたので、こちらで共有します。



『結婚を前提としたお付き合いは致しません』


部屋・夜

優子、キーボードをカタカタしている。
菅田、机の上にあるポテチに手を伸ばしながら
菅田「どうですか、新しい仕事は」
キーボードを打ち続ける優子。
菅田「続きそう?」
優子、嫌そうな顔で菅田を見てからマウスをカチカチする。
優子「辞められるのなら明日にでも辞めたい」
菅田「まだ何も始まってないじゃん」
目線を下に落とす優子。
菅田「最初は誰だってつらいよ」
優子、机の上にあるポテチを袋ごと奪い
優子「良いよ! 将暉は好きなことやってんだから! 一緒のつらいにしないで!」
涙目でポテチをバリバリと食べる優子。
菅田、スマホと財布を持って立ち上がり、家を出る。


山崎家

玄関で、
山崎「また喧嘩?」
菅田「いや、めんどくさいなと思って」
菅田、靴を脱いでズカズカと歩く。
溜め息をつきながらそれに続く山崎。
キッチンに入り、お酒を用意する。
菅田、床に座り、
菅田「アイツもう辞めたがってんだよ。分かってたけどさ」
山崎「で、何て言ったの?」
お酒を運ぶ山崎。
菅田、それを受け取り
菅田「続けろって言った」
山崎、お酒を一口飲んで
山崎「そりゃめんどくさくなるわ」
山崎「優子ちゃんは将暉の同意が欲しくて言ったんでしょ」
お酒を机の上に置く菅田。
菅田「何でも俺基準で動くようなやつになって欲しくないんだけど」
山崎「実際に辞める辞めないは別としてさ…」
菅田「俺今のアイツのブログが好きだから。本当につまんなくなったら辞めさせるよ」
山崎、ふふって笑う。
山崎「そういうことね」




オフィス・夜

電話をする優子。
優子「また何かありましたら、よろしくお願い致します。失礼します」
優子、電話を切る。
伸びをして溜め息をついてから、パソコンに向かう。


あいだ



部屋・夜

床に倒れている優子。
菅田「おい」
菅田、優子をゆさぶる。
優子、目はうつろ。
机の上にマイスリーのシート。(6錠くらいしか飲めてない)
菅田「下手くそ」
優子、目を閉じる。
菅田「言葉が好きなんじゃないのかよ」
菅田、優子を起き上がらせベッドに寝かせる。


部屋・朝

優子、目を覚ます。
目の前に菅田の顔。
菅田、優子を抱きしめたまま眠ってる。
優子、菅田のほっぺをつねる。
菅田「んー」
菅田、うっすらと目を開けて再び閉じる。
優子「ありがとう」
菅田、目をつぶったまま
菅田「うん」
優子「好き」
菅田「うん」
優子を強く抱きしめる菅田。
優子も菅田の背に手を回し、また眠りにつく。



部屋・夜

優子、無言で家のドアを開ける。
ベッドの上で横になって雑誌を読んでいる菅田、優子を目で追う。
優子、カバンとコートを床の上に置き(落とし?)、ノートパソコンを開く。
菅田、しばらく優子を見てから、再び雑誌を読み始める。
優子、キーボードをカタカタ。
時計はすでに23時を過ぎている。
キーボードを打つ音が一定。
菅田、不思議に思い、上半身を起こしてパソコンを覗き込む。
何回も書かれている『もう無理』。
菅田、思いっきりパソコンを閉じる。
優子「えあっ」
菅田、パソコンを抑えたまま
菅田「そんなブログ、読んでも面白くない」
優子、無気力そうな目で菅田を見る。
菅田、パソコンから手を放さない。
優子、挟まれた手を抜き、ベッドに倒れ込む。
菅田、パソコンを閉じる操作をしてから立ち上がり、冷蔵庫に向かう。
優子、リモコンを手に取り、テレビをつける。
『僕の原点はビートボックスで、スーパーの店員をしながら毎日動画を撮り続けていました。(ここからバックで流れる感じ)そしたらある日1本の動画がいきなり世界中から見られるようになって~』
菅田「はい、お薬」
菅田、優子に氷結を渡す。
テレビ画面をじっと見ている優子。
菅田、優子をじっと見る。
テレビ画面にはふざけているHIKAKINと『好きなことで、生きていく』の文字。
菅田「やっちゃうよ?」
菅田、プルタブに指をかける。
優子、菅田から氷結を奪う。
プシュッ。
優子、氷結を一気飲みする。
優子「あー!」
菅田、ニコリと笑う。


あいだ


オフィス

編集長「家出系男子? 聞いたことある?」
隣の席の人、首を振る。
優子「なんというか、2ヶ月に1回くらいどっかに行っちゃうんですよ。のらりくらりと。それでまた何事もなかったかのように帰ってきて…」
編集長、顔をしかめながら
編集長「えぇ…。もっとなんか、あるでしょ。『目が死んでる系男子』とか」
編集長、パソコンを閉じる。
編集長「早めにね。あとそんな男、もしいたら最低。私は無理だな」
優子「ですよね…」


居酒屋

優子「もう3ヶ月だよ!?」
山崎「最高記録だな」
優子、ジョッキをつかむ。
優子「何がしたいんだか分かんない」
山崎「どうせまたひょっこり帰っ…て…」
山崎、視線を動かす。
菅田「いーっす」
菅田、優子の隣に座る。
優子、隣を見て、
優子「びっ、くりした!」
菅田、目を細めて
菅田「あぁ、何。いたの」
優子「いたのって何!? 見えてたでしょ! もーほんとムカつく!」
優子、怒り気味に菅田の前に取り皿とお箸を置く。
菅田「すみませーん、生一つ」
山崎「何してたの?」
菅田「撮影とか。あとは友達と遊んでたわ」
菅田、枝豆を食べる。
山崎「あぁそう」
山崎、枝豆を食べる。
優子、少し怒り気味に
優子「上手くいった? 撮影」
菅田「うん、まぁ」
山崎「映画だっけ?」
菅田「そう。今回は結構セリフあってさ」
菅田、枝豆を食べようとするが一粒落とす。
優子、それを指差し、しかめっ面で菅田を見る。
菅田、口を開ける。
優子、ちょっと嫌そうな顔をしてから、菅田の前のお皿に枝豆を入れる。
菅田、その枝豆を食べる。
菅田「監督にも…」
山崎「あの、1つ良い?」
菅田・優子、山崎の方を見る。
山崎「2人って結局どういう関係なの?」
一瞬の間。
菅田・優子、同時に首を傾げながら、
菅田・優子「うーん」
溜め息をつく山崎。


優子「山崎くん、今日はありがと! スッキリした」
山崎「今日は、じゃなくて、いつも、でしょ」
優子、お辞儀をしながら
優子「いつもありがとうございます」
山崎「あはは、じゃあ気を付けてね」
優子、山崎に手を振って歩きだす。
山崎も手を振り反対の方に歩く。
山崎「今日うち…」
山崎、横を見るが菅田がいない。振り返る。
菅田、優子の隣にいる。
山崎、ニヤニヤしながら、
山崎「結局そうじゃん」


部屋

菅田、ベッドの上で雑誌を読んでいる。
優子のスマホの着信音が何回か鳴る。
菅田、スマホの方を見る。
優子、台所から戻ってきて、スマホを手に取る。
優子「あ!」
菅田「誰?」
優子、スマホを見たまま嬉しそうに
優子「高橋さん。大学時代の先輩で、今フリーで働いてるんだ。それで色々教えてもらってるの。凄い良い人なんだよ」
菅田「その人にすれば?」
優子、菅田を睨む。
菅田「何?」
優子、再びスマホをいじりはじめる。
菅田、雑誌を閉じ、優子の頭を叩く。
優子「…いった!」
優子、菅田の膝を叩く。
菅田「バカ」
菅田、優子の髪の毛を引っ張る。
優子「痛い! 始めた方がバカ!」
優子、立ち上がり、菅田のセットされた髪の毛をぐしゃぐしゃにする。
菅田「おい!」
菅田、優子をベッドの方に引っ張る。
優子「ちょっ…」
2人で取っ組み合いを始める。(小学生みたいに)
しばらくして、髪も服も乱れたお互いを見て、笑い出す。
優子「あはは。今話題のイケメン若手俳優はどっか行ったね」
菅田「お前だって、どこがオシャレなカフェ巡りライターじゃ」
床に放置されたスマホ
誰かからのメッセージで画面が光る。



 部屋

ベットにもたれかかり、2枚のハガキ見ながら、複雑な表情で溜め息をつく優子。
ハガキを引き出しの中にしまい、ノートパソコンを開く。
菅田「ただいまー」
優子「んー」
菅田、コンビニの袋からアイス(ガリガリ君ソーダ味)を取り出し、ベッドの上に乱雑に乗る。
胡坐をかいて、アイスを食べ始める。
優子、しばらくパソコンをカタカタしながら菅田に聞く。
優子「ストロングあった?」
菅田の方を見る。
優子「ねぇ!」
菅田「冷蔵庫入れたよ」
優子「そうじゃなくて! ベッドの上で食べないでよ!」
菅田、無言で優子をじっと見てから、再びアイスを食べ始める。
優子「聞いてんの!?」
菅田「そういえば今度、賢人と飲みに行く」
優子「へぇ!」
菅田「またあの店でいっかなぁ」
優子、無言で菅田の膝を叩いてからパソコンの方に向き直る。

アイスを食べ終える菅田。
棒を入れたコンビニ袋をぐるぐる巻きにする。
菅田「捨てといて」
優子、パソコンを見たまま
優子「自分で!」
溜め息をついてゴミ箱の方に向かう菅田。
優子、顔をしかめる。
優子のスマホが鳴る。
画面を見て嫌そうな顔をしてから電話に出る優子。
優子「もしもし?」
  「…元気だよ」
  「またその話!?」
  「暮らせてるから! じゃあね!」
優子、スマホをベッドの上に放り投げ、髪の毛をぐしゃぐしゃにする。
菅田、画面の外からやってくる。
手にはストロングの缶。
菅田の方を見る優子。
菅田、再びベッドの上に座り、ストロング缶を1口飲んでから優子に渡す。
菅田「はい。あげる」
優子「私のだから!」
優子、菅田からストロングの缶を奪いグイと飲む。
再び画面を見て、タイプを始める。



 部屋

菅田、脚本を持って優子の横に座る。
優子「もー! これで3回目!」
菅田「新しいの決まった」
優子、菅田の手元を見てから顔を見る。
優子「おめでとう」
無言で頷く菅田。
優子「ねぇ、これどっちの方がグッとくる?」
パソコンの画面を菅田に見せる。
菅田、しばらく画面を見つめてから
菅田「こっち。分かりやすい」
優子「ありがと」
優子、キーボードを打つ。
菅田、脚本を見ながら
菅田「多分」
菅田の方を睨み付ける優子。
優子「無責任!」


 誰かの家

少し出来上がっている優子と香奈と美紀。
美紀「お待たせしましたー」
良い感じの料理とお酒を手に登場する美紀。
優子「わ、奮発したね」
美紀「ボーナスボーナス」
香奈「にしてもさー、このメンバーで集まるの久々だねー」
優子、ほろ酔いをコップに注ぎながら。
優子「だね。突然集まろうなんてどうしたの?」
香奈「もしかして良いことあったー?」
香奈、ニヤニヤしながら、ピクルスの刺さったピックで美紀をつつくような動作をする。
美紀、同じくニヤニヤしながら
美紀「実はー」
香奈「なに!?」
優子、ほろよいを注ぎながら
優子「早く言ってよー!」
美紀「雄くんと、結婚しまーす!」
香奈「やー! ほんと!?」
優子「おめでとー!」
優子、コップに入ったほろよいを1口飲む。
優子「でも良かったね、30までには結婚したいってずっと言ってたじゃん」
美紀「そそ。あと1年しかないって超焦ってたけど」
優子「言えば叶うもんだね」
美紀、デレデレしながら、
美紀「引き寄せの法則ってやつー?」
優子、何かを考えるような仕草。
香奈、コップを持つ。
香奈「じゃ、お祝いの意味も込めて、もう1度」
3人「かんぱーい!」


 マンションの廊下、家

優子「30までに結婚30までに結婚30までに結婚…」
家のドアを開ける優子。
優子「30ま…」
玄関に置いてある菅田の靴を見てギョッとする優子。
優子「いたの?」
菅田、脚本を見たまま
菅田「おかえり酔っ払い」
優子「全然飲んでないから! 鏡月まだあるっけ?」
優子、冷蔵庫のドアを開ける。
菅田「ないよ」
優子「えー」
優子、鏡月を持って振り向く。
優子「あるじゃん」
優子の方を一瞬見る菅田。
菅田「良くないよ」
優子「何が?」
コップを取り出す優子。
黙る菅田。
優子「ねぇ」
菅田、脚本をめくりながら
菅田「お酒は助けてくれないよ」
優子、顔をしかめる。
優子「助けるとかじゃなくて! お酒は楽しくコミュニケーションをとるためのツールなの!」
菅田「へぇ」
鏡月のラベルを見つめる優子。
優子「いいや、今日はもう」
優子、鏡月とコップをしまい菅田の隣に座る。
菅田、脚本を読んだまま優子のほっぺをつつく。
優子「…なに」
菅田、優子の方を見ながらニコリと笑う。
優子「将暉ー」
菅田に抱きつく優子。
菅田、脚本を机の上に置き
菅田「はいはい」
優子「今日ね、友達がね」
優子、顔をあげる。
机の上に置いてある脚本が目に入る。
菅田「友達が?」
優子「…何でもない」
優子、菅田から離れ、パソコンを開く。
優子「よし!」



優子、目をほぼ閉じたまま起きる。
優子「…何時?」
洗面所の方から菅田の声。
菅田「5時」
優子「…仕事?」
菅田「そう」
しばらく無言。
優子、顔だけ洗面所の方に向ける。
優子「朝ごはん作ったげよっか」
菅田「もう食べた」
再び布団をかぶろうとする優子。
スーツケースが目に入る。
優子「何? 泊まり?」
菅田「うん。1週間くらい」
優子「えーご飯1人?」
歯を磨く菅田。
優子「もっと早く言ってよ。香奈誘お」
優子、スマホに手を伸ばす。
優子「あー、でも祝日じゃん。彼氏とデートか」
菅田「生田は? 久々に飲んだら?」
優子「いくちゃんは家族で帰省してるよ」
菅田、歯ブラシをくわえたまま
菅田「かわいそ」


居酒屋

山崎「アハハハ。可哀想って!」
優子「だいたいさぁ、当日に報告するなよって感じ!」
優子、ジョッキをテーブルに置く。
山崎「まぁ勝手に出ていくときより良いじゃいの」
首を傾げる優子。
山崎「でも俺を用意してくれたのは将暉だからね?」
枝豆を食べる優子。
優子「別に将暉がしなくたって私が誘ってました!」
山崎「けど確かに可哀想だよ」
山崎、枝豆を手に取る。
山崎「寂しがり屋って損だね」
優子、メニューを見ながら
優子「将暉と仲良いの分かるわ」
山崎「ごめんごめん」
山崎、苦笑いしながら空になった優子のジョッキをテーブルの端に寄せる。
山崎「結婚すればいいのに」
優子、目をパチパチさせた後に再びメニューを見る。
優子「当日に泊まりの報告をするような人は嫌です!」


あいだ

菅田「もう少し遊びなよ」
優子「そんなの心配されなくても。大丈夫ですので」
菅田「いつも口だけじゃん」

あいだ

高橋先輩と何か

あいだ

カフェ

香奈「このカフェ、ずっと前から来てみたかったんだよね」
優子「うん、なんか、良い感じだね」
店員、やって来る。
店員「お待たせしました。季節のフルーツパフェです」
美紀「可愛い~!」
2人、スマホで写真を撮る。
優子「どこから食べよ~」
香奈と美紀、そのままスマホをいじっている。
香奈、スマホをテーブルの上に置き、
香奈「あー、ね! 崩れちゃいそう」
美紀「あたし、こういうの大胆にいっちゃうわ」
香奈のスマホの画面が光る。
美紀「彼氏?」
香奈、軽く頷く。
優子「美味しい!」
美紀、一口食べる。
美紀「ほんとだ!」
しばらく談笑。
美紀と香奈、ちょくちょくスマホをいじる。
優子もスマホを手に取るが、カバンに放り込む。


部屋

菅田「お姉さん、今日はお酒はいいの?」
音楽を聴きながらパソコンの前でぼーっと体育座りをしている優子。
机の上の音楽プレーヤーには『Lucky Man/嵐』の表示。
菅田、ベッドの上に座り、音楽プレーヤーに手を伸ばす。
軽く操作してから机の上に置き、横になる。
ポロポロと泣き出す優子。
菅田「あ、泣いた」
優子、軽く下を向く。
菅田、すました顔で
菅田「つらい気持ちのときはね、無理に明るい曲を聴くんじゃなくて…」
優子、菅田を叩く。
菅田「いった、何…」
優子「私はあんたなんかいなくたって生きていける!」
真剣な顔で優子をじっと見つめる菅田。
優子「将暉は関係ないの! 私が嬉しくなったり悲しくなったりするのに、将暉は関係ない! 将暉がいなくても私は仕事だってできるし、ご飯も食べていけるの!」
菅田、ベッドから降り、優子を抱きしめる。
すぐに体を離し、
菅田「おやすみ」


【朝】(パンクロッカーなんだよ/忘れらんねえよ)
(♪前奏)
優子、目を覚ます。
菅田がいないことに気が付き、あたりを見回す。
少しぼーっとした後、身支度を始める。
(♪最後の涙は土にも還らず~)
一人で食事、着替え、家を出る。
歩く。
カフェでパソコン、家でもパソコン。
机に突っ伏す。
別の日。本屋。
本を読む。
取材。
またパソコン。メールを開く。溜め息。
別の日、夜。
髪の毛ぐしゃぐしゃ。
パソコンを見たままベッドをバンバン叩き「お酒」。
振り向くが、そこに菅田はいない。
険しい顔で再びパソコンへ。
別の日、ベッドにもたれかかる。
スマホ光る。開く。
そのまま出かける優子。
(曲終わり)


公園

優子、小走り。
優子「すみません。お待たせしました」
高橋「良いよ。こっちこそごめん、いきなり呼び出して」
優子「いえいえ、もうむしゃくしゃしてたんで」
高橋、軽く笑う。
高橋「将暉くんに癒してもらえばいいのに」
優子、キョトンとする。
高橋「あれ?」
優子「あぁ、将暉。出ていっちゃったんです。私がキツく言っちゃって」
優子、苦笑いをする。
優子「家出系男子だから」
高橋、心配そうな顔で
高橋「大丈夫なの?」
優子「あぁ、はい。なんというか、”むしろ”大丈夫です!」
高橋「そっか」
優子、笑顔で頷く。
高橋「じゃあ…行く?」
優子「はい」

あいだ

ゴシップ誌の表紙
『今注目の若手俳優が元お天気キャスターと庭園デート!?』

LINE電話
菅田「違うよ。ただ相談に乗ってあげてただけ」
優子「初めて生で聞いた。その言い訳」
菅田「本当に何もしてない」
優子「何もってなに!?」
菅田、あきれ顔になり、ため息。
優子「やだ、汚い!気持ち悪い!」
菅田「分かったよ」

あいだ

高橋先輩と何か

あいだ

山崎『今うちに将暉いるよ』
優子、怒ってるスタンプ。
山崎『そろそろ仲直りしたら?』
既読がついて数秒あく。
優子『考えとく』


外(うつくしいひと/忘れらんねえよ)
(♪あなたがどこで何をしていても~)
優子、鏡を見て何度も髪を整えたりする。
菅田、山崎の家から出かける。
優子、公園の方に向かって歩く。
菅田も公園の方に向かって歩く。
菅田、徐々に歩くスピードが遅くなる。
視線の先には優子。(超オシャレな格好)
菅田、その場から進めずにいる。
優子、あっ、という顔をする。
高橋、小走りでやってくる。お待たせ、という動作。
首を横に振りニコニコする優子。
菅田、それをじっと見つめている。
高橋、優子にココアを渡す。
嬉しそうな顔をして受け取る優子。
菅田、再び歩き出し、近くのコンビニに入る。
コンビニの前を通る高橋・優子。
優子、楽しそうな顔をしている。
(曲終わり)


山崎家

山崎「おかえりー」
菅田「おぉ」
菅田、コンビニの袋を乱雑に置く。
山崎「なに、無かったの?」
菅田「いや、あったわ。ホレ」
菅田、山崎にカプリコを渡す。
山崎「サンキュー」
菅田、落ち着きがない。
山崎「あれ、ジュースは?」
菅田「あぁごめん、忘れた」
山崎「そう」
菅田、山崎の隣にドカッと座る。
山崎、びっくりした顔をする。
山崎「あと、俺、とんがりコーン頼んだんだけど」
菅田、びくっとしながら山崎の方を見て
菅田「あぁ、そうだっけ。コーンしか覚えてなかったわ」
山崎、カプリコを見てから
山崎「まぁ良いけど…」
山崎、菅田を見て
山崎「何かあった?」
菅田「いや、別に」
山崎、怪訝な顔で菅田を見る。
菅田、机の上に置いてあるコーヒーを飲む。
菅田「そういえば、最近アイツに会った?」
山崎「アイツ?」
菅田「あの、なんだっけ、優子?」
山崎、軽くため息をつき
山崎「まぁ、会ってるよ。ちょくちょく」
菅田「なんか…なんか言ってなかった?」
山崎、カプリコを食べながら
山崎「なんかって?」
菅田、立ち上がり部屋をぐるぐるし始める。
菅田「アレだよその…」
菅田、髪の毛をぐしゃぐしゃして
菅田「あーもう! ムカつく!」
菅田、急に山崎の方に振り返り
菅田「絶対ココアじゃないだろ!」
山崎、ちょっと引き気味に菅田を見る。


バー 夜

高橋「ハハハ、そんなことがあったんだ」
優子「そうなんですよ、それで!」
高橋、優子をじっと見る。
優子「あれ、もう酔っ払いですか?」
高橋「うん、そうかも」
優子、ワインを一口飲む。
優子「高橋さんって、ほんと良い人ですよね」
優子、小声で
優子「誰かさんと違って」
高橋「優子ちゃん、そろそろ行く?」
優子、口の周りをふいて
優子「そうですね。時間もアレですし」
高橋、会計を済ませる。


外 夜(景色が綺麗なところ)

優子「ごちそうさまでした。本当にいつも、ありがとうございます」
高橋「良いの良いの。若いとき思い出して応援したくなっちゃうから」
優子「まだ若いじゃないですか」
高橋・優子、笑う。
高橋・優子、少し歩く。
高橋「優子ちゃん」
優子「はい?」
優子、高橋の方を見る。
高橋、立ち止まる。
高橋「あの」
優子、カバンからスマホを取り出し
優子「あれ、終電! 終電大丈夫ですか?」
高橋「聞いて」
優子、高橋をじっと見る。
優子「…はい」
高橋「俺、優子ちゃんともっとずっと一緒にいたい」
優子、申し訳なさそうに
優子「なんか、ありがとうございます」
高橋「そうじゃなくて…」
優子「あの、勘違いだったら申し訳ないのですが、それはお断りします!」
一瞬の間。
高橋「えっ」
優子「高橋先輩のことは本当に尊敬してるし、感謝してもしきれませんが…」
高橋「だったら何で」
優子「なんか、理由とかは無くて、なんとなく…」
高橋、優子をずっと見てる。
優子「なんとなく、違うんです」


駅前広場

山崎「そんなに寂しいなら連絡すれば良いじゃん」
優子、首を横に振る
優子「嫌、絶対しない」
山崎「なんで?」
優子「アイツがいないと生きていけないみたいじゃん」
優子、少し考えるようなしぐさをしてから
優子「あーもう! ムカつく!」
山崎、吹き出す。
山崎「2人ともよく分からないよ」
優子「でも、」
山崎、優子の方を見る。
優子「将暉もそれが分かって出ていったんだと思う」
山崎「あぁ、何か言ってたよアイツ」
優子、びっくりした表情で山崎の方を見る。
優子「え?」
山崎、菅田の真似をしながら、
山崎「俺はアイツを満たしたくないんだよ。何もしなくなるから。みたいな?」
優子、きょとんとした後少し嬉しそうに。
優子「そっか」
優子「まぁ、元気にやっててくれればそれでいいや」
山崎、優子をじっと見る。
優子「でも、もしまた帰ってきたら、迎え入れてあげてもいいけど」
山崎「そういえばさ」
優子「ん?」
山崎「大学?の先輩とはどうなったの?」
優子、嬉しそうな顔で
優子「あっ、あれね、実は…」
山崎「何もなかったでしょ。というか、無くした?」
優子「分かってんじゃん。つまんないの」
山崎、子供連れの家族を見ながら
山崎「優子ちゃんってどうすんの?」
優子「何が?」
山崎「なんというか、将暉とは結婚しなさそうだし、将暉以外とはもっと結婚できなさそうだし」
優子「…なんか」
山崎・優子、将暉の真似をして冷たい目をしながら
山崎・優子「かわいそ」
山崎・優子、笑う。

あいだ

菅田、優子に氷結を渡す。
菅田「お前はココアじゃなくて氷結だろ」
優子「ありがと…?」
菅田「良いんだよ、今に始まった話じゃないから」